こんにちは。幼少期、左利きから右利きになるよう教育された獣医師の小島です。皆さんの利き手はどちらですか?犬や猫だと歩くときに足を踏み出す方が利き足という説など、利き手利き足に関して考え方は様々で調べてみると面白いです。
沖縄県は西表島と石垣島にのみ生息し、姿を見せることが滅多にない幻のヘビ・イワサキセダカヘビの右利き仮説はご存知ですか?今回はこの仮説を2012年に出版された「右利きのヘビ仮説-追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化-」という本に基づいて簡単に紹介したいと思います。
イワサキセダカヘビはカタツムリを食べる偏食家のヘビです。偏食家といっても、前回のヘビブログでお話ししたヤマカガシもカエルや魚を食べる変わったヘビですし(カエルではなくホタルの幼虫を食べて毒を得る種のヤマカガシも発見されました)、ミミズを食べるタカチホヘビなど、ヘビの食性は多種多様で偏食家だらけです。
ヘビといえば食事は丸呑みというイメージがありますが、イワサキセダカヘビは殻ごとカタツムリを食べるのではなく、柔らかい軟体部のみ食べます。ヘビは下顎の左右を別々に動かすことができるので、器用に殻から身を引きずり出すのです。またこのイワサキセダカヘビが捕食する種のカタツムリにおいて、殻が右巻きになっているのが多数派だそうです。
そして右利きのヘビ仮説とは、イワサキセダカヘビの下顎の歯の数が左よりも右の方が多いことと、イワサキセダカヘビがカタツムリを捕食する際に必ず頭を左に90度傾けて右の下顎を殻の奥へ食い込ませるということより、イワサキセダカヘビは右巻きのカタツムリを捕食しやすくするために”右利き”に特化したのではないかという仮説です。これを立証するために著者が様々な実験を行っています。カタツムリもまた、このヘビから逃れるために一定数は殻が左巻きになるように共進化しているという仮説も立てています。実際イワサキセダカヘビは左巻きのカタツムリをうまく捕食できず口から落としてしまいます。
詳しく興味のある方は是非読んでみて下さい!特にヘビがお好きな方にはお勧めです。
私の家にもヘビがいるので、食事シーンをこっそり撮影しコーンスネークにも右利きや左利きが存在するのか観察してみましたが、3回観察し、3回全て同じ向きに食いつくことはありませんでした。そう簡単に有意な結果は得られないものです。
皆さんもお家にいる動物さんの利き手利き足、探ってみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
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獣医師 蒲原(小島)
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大学の時に行ったエキゾチックアニマルのイベントがきっかけでヘビが大好きになりました。実際にヘビを飼育することで、犬や猫に加え爬虫類や他エキゾチックアニマルの診療を幅広くしたいという想いがより強くなっていきました。
獣医師としてまだ駆け出しですが、精一杯勉強して多くの患者さんの助けになれるよう頑張ります。