肝リピドーシスにご注意を。

こんにちは、少し朝晩冷えるようになってきましたね。
気温が下がると、途端に末端冷え性が悪化する院長です。

今回は肝リピドーシス、という病気を紹介いたします。

肝リピドーシスという病気は、食欲がなくなった動物で発生します。
食欲がなくなる原因は何でも構わないのですが、食べなくなることで肝臓に脂質(通常トリグリセリド)が蓄積して発症する病気です。

脂肪が肝臓に蓄積するにしたがい、肝不全や肝臓の炎症を引き起こす事が知られています。
原因として肥満、高脂血症という予防できるものから、膵炎や肝炎に続いて発生するケースもありますし、腫瘍などで食欲が落ちてしまう事でいつの間にかこの病気になってしまう事もあります。

特に、この病気は爬虫類(カメやトカゲ)に発生しやすい事が分かっています。
爬虫類が肝リピドーシスになってしまった際、残念ながら特徴的な症状はなく、
痩せてはいないのに突然元気がなくなる、食欲の低下、などが見られる場合に疑われます。
確定診断は、肝臓の生検(組織を採取して検査する事)が必要なのですが、レントゲン検査・エコー検査・CT検査などである程度判断する事もできます。
色々な病気と併発するため、解剖時に気づく事もある病気ですが、肝臓は白っぽくもろい状態になっています。

ちなみに、トップの画像は食欲がなくなり、CT検査を実施したトゲオアガマちゃん。
通常、肝リピドーシスを起こすと元気食欲が低下するので、爬虫類ではきちんとごはんを食べさせる事が最も大切。
このアガマちゃんは、治療をしていくうちに食欲が早期に戻ったため実施しませんでしたが、食欲不振が長期に及ぶ場合、食道から胃までチューブを設置したり、強制的に経口でごはんをあげてもらったりする必要が出てきます。

例えばですが、こちらは食道〜胃までチューブを設置したフトアゴヒゲトカゲちゃん。bearded dragon
(フトアゴは強制的に給餌できる子も多いのですが、この子はかなり嫌がり、口を傷つけてしまう可能性があったのでチューブ設置としました)

特に爬虫類では食事を強制的に摂取させるかどうか悩むケースもありますが、
基本的には体重が元の10%、減少するならば栄養の給与を考える必要があると言われています。

食べないなー、という場合、つい長期間経過観察してしまい、手遅れになってしまうカメさん、トカゲさんもいます。
「体重の10%」、これだけは忘れない様にしてくださいね。

この記事を書いた人

院長 伊村啓
院長 伊村啓
動物病院は、飼い主様と一緒に、大切な家族である動物たちの幸せを考え、不安や苦しみを解消する場です。検査もただ行えば良いという訳ではありませんので、必要な理由をきちんとご説明した上で進めていきます。筋道を立て、とにかく分かりやすく説明する事には特に力を入れています。

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