ラット、と聞くと実験動物というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?
しかし当院にはペットとして、ご家庭でかわいがられているラットが来院し、どの子もとても人懐こいです。
ファンシーラットとして、ペットショップでも人気があるみたいですね。
足に腫瘍をかかえたラットのチュチュちゃんも超性格美人のラットちゃんのひとり。
数週間で急成長してしまった直径4cm近くある腫瘍を太ももにつけての来院。
レントゲン検査での骨反応はなく、一般状態も悪くなかったので、すぐ手術で摘出することになりました。
ラットの手術をする病院は多くないかもしれませんが、それは麻酔の難しさもあるのではないでしょうか。当院では獣医2人、看護師1人の三名フル稼働で、術者、麻酔、助手・外野を分担します。ラットは犬猫のように人工呼吸器で呼吸管理できません。モニターできるのは心電図とSPO2(酸素飽和度)くらいなので、麻酔担当は緊張感120%状態。各種緊急薬をスタンバイしつつ、お腹から目を離さず呼吸を監視しつづける必要があります。
まずは術前の注射(前投薬)。そして酸素化処置、麻酔をいれてモニターをつけ、毛刈り。
少しでも麻酔時間を短縮するためにスピードも要求されます。
術野の消毒を済ませたらオペ開始。皮膚を切るとすぐそこまで腫瘍が出てきます。
これを切り離すのですが、急成長を遂げてきた腫瘍なだけに血流がしっかり通っているので、正確な止血がポイントです。
小さな血管は極細電気メスで、大きな血管は糸で結紮しながら進めていきます。
そして腫瘍下の筋肉や骨組織との癒着もなく、無事に分離!
あとは閉じるだけですが、これだけ大きな腫瘍がなくなると死腔と呼ばれるスペースができて浸出液がたまってしまうので、スペースを埋めながら縫合していきます。最後に外科用ステープラーで皮膚をとめて完了。約1時間強でほっと一息。
麻酔を切ってからの覚醒は非常にスムーズで、チュチュちゃんはすぐに動きだしました。しばらく後に水を入れると、すぐにぺろぺろと飲んでくれました。その姿の可愛らしいことといったら・・・他のどの動物もかないません!
しかし案の定、傷口は気になる様子・・・カミカミし始めそうだったので、特製エリザベスカラーを設置させてもらいました。そして2泊の入院のうちに、全スタッフがチュチュのとりこになるほど、愛らしい姿を振りまいてくれたチュチュちゃん。
抜糸できるまでの1週間、カラーはちょっと煩わしいかもしれませんが、今後の快適な生活を願うばかりです。
この記事を書いた人
- 皮膚科認定の資格取得に向けて勉強中。子供たちに命の大切さを伝える活動もしています。ポックル動物病院も私自身も、動物と飼い主様のお力になれるようずっと成長し続けていきたいと思います。
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