皆様、明けましておめでとうございます。
今年は健康に気をつけようと、心に決めた獣医師の谷です。
先月、院内スタッフ向けにモルモットセミナーを実施しました。
その中から、モルモットの三大疾患についてひとつずつ紹介していきたいと思います!
今回は「不正咬合」のお話です。
不正咬合とは、歯並びや噛み合わせが良くない状態のこと。
モルモットの歯はデグーやチンチラ、ウサギと同様、切歯と臼歯が全て生涯伸び続ける”常生歯”です。通常は、繊維質の食餌により適切に歯を摩耗することで正常な噛み合わせを保っています。これが何らかの原因により正常な咬合面を保てなくなることで不正咬合になってしまいます。
◎原因
一番は繊維質の不足といった不適切な食餌による臼歯の摩耗不足です。
他に、栄養性(特定のビタミンの過剰/不足)、外傷(同居個体とのケンカやケージの網を齧る行動など)、遺伝的要因などが関連して発症することも考えられています。
切歯に関しては、単独の異常ではなく臼歯の不正咬合に伴って発生することが多いです。
◎症状
以下のような症状がみられます。
・嗜好性の変化、食欲不振
・興味があるのに食べられない
・よだれ、口周りや顎下が濡れている
・排便量の減少、便のサイズが小さくな
・体重減少
◎診断
頭部の触診、口腔内検査、必要に応じてレントゲン検査を行います。
口腔内検査では、開口器を用いて歯並びや噛み合わせ、口腔粘膜に傷がないかを観察します。
ここでモルモットの歯の大きな特徴が関わってきます。
それは、臼歯が湾曲して生えていることで、通常の咬合面は約30度と斜めに噛み合っているという点です。通常斜めに噛み合っている臼歯は、不正咬合になると上顎は頬側へ、下顎は舌側へ伸びやすくなります。その結果、頬の粘膜を傷つけたり、舌の動きを邪魔することがあります。
こちらは正常な咬合面の口腔内と不正咬合症例の口腔内写真です。
◎治療
不正咬合と診断がついたら、伸びた歯を切ったり削ったりして整えていくことになります。一部分の処置は無麻酔でも行うことが出来ますが、程度によっては鎮静や麻酔をかけて処置することになります。
また、不正咬合と診断された子においては麻酔下でのCT検査も有用です。CT検査では、無麻酔では確認出来ない歯根部や顎関節の評価が出来るためです。
また、一度不正咬合になると完治することはほとんどありません。定期的な麻酔下での歯科処置が必要になることが多く、生活の中でも補助給餌が必要になり飼い主様の協力を要することもあります。
他にも不正咬合により起こる続発症として、よだれによる皮膚炎、歯根の感染などによる顔面膿瘍、流涙症、眼球突出などを引き起こすこともあります。
いかがでしょうか?小さなお口に隠された奥歯の問題…興味をもっていただけたら嬉しいです(^^)
何か症状が気になる時にはご相談ください。また、健康診断のひとつとして元気な時から一度お口の中を確認しておくのも良いと思います!
フードの相談などもお気軽にどうぞ!
この記事を書いた人
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ハムスターを飼っていたことから、エキゾチックアニマルの診療を行う獣医師になりたいと考えるようになりました。大学在学中にはすっかりモルモットの虜となり、現在は2匹のモルモットとともに暮らしています。
動物たちと飼い主様に寄り添う獣医師になれるよう、日々精進してまいります。
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