かさぶたや湿疹に要注意~わんちゃんによくある皮膚病~

すっかり涼しくなってきた札幌ですが、今年の夏は長くて雨も多かったですね。
そんな気候のせいもあってか、今年は例年以上にあるわんちゃんの病気が多かったように思います。
トップ写真、実は我が家のバーニーズのぼたもちの後肢です。
この頃よく足をなめているな、と思って見つけてしまったのですが、何の病気だと思いますか?

これは『膿皮症』という細菌感染症です。
感染症といっても人や他のわんちゃんに移ったりするものではありません。
膿皮症を起こす主な原因菌は、健康なわんちゃんの皮膚にもいる、Staphylococcus pseudintermedius(スタフィロコッカス シュードインターメディウス)というブドウ球菌の一種です。
症状は黄色い丸いかさぶたのようなものや膿を含んだ湿疹など、背中に出る子が多いのですが、皮膚のバリアが崩れて細菌が入り込むことでどこにでも発症します。かゆみがあることもありますが、ないこともあり、飼い主さんは気づきにくくトリミングにきて見つかることもあります。
わんちゃんによくある病気ですが、発症要因はたくさんあり、若い子から高齢の子まで様々な犬種に見られます。
初めての発症で治ってそれきりで終わる子もいれば、何度も繰り返す子もいます。
皮膚免疫力の弱いわんちゃん、例えば脂漏症などべたつきやすい子、高齢でホルモン疾患のある子、もともと皮膚バリアの弱いアトピー素因のある子などは繰り返しやすい傾向にあります。
例えば、写真の子は犬アトピー性皮膚炎のあるフレンチブルドッグの子の脇腹です。
急に痒がるようになったという来院で、皮膚の丸いかさぶたのような部分(表皮小環)を染色検査してみると、ブドウ球菌がたくさん検出されました。そして抗生剤を2週間内服してもらったところ、症状はほぼ消失し、さらに2週間続けてもらうとうっすらと脱毛痕が残る程度になりました。

こういう子の場合、抗生剤の使用終了後も、アトピーの管理をきちんと続けつつ、再発しないようシャンプーや消毒液で定期的なスキンケアをしてもらい、さらに皮膚バリア力を高めるサプリ等で管理をしてもらうことで予防してもらっています。

ぼたもちの場合、写真の1か所だけでしたので、消毒液での治療を数日したところ症状は消失しました。
人医療でもMRSAなどの耐性菌の問題がありますが、実は犬でも同じです。すでにMRSP(メチシリン耐性ブドウ球菌)という耐性菌も獣医療で問題になっており、抗生剤の使用は慎重に判断する必要があります。
当院でも難治性の膿皮症の子で、薬剤感受性試験に出したところ、ほとんどの抗生剤に耐性という菌による膿皮症だった子もいました。
そのような問題も考慮し、当院では可能なら外用療法(消毒液やシャンプー)から治療を検討しつつ、適切な抗生剤の選択をするよう心掛けています。
痒みが強くない場合、お家での発見が遅れてどんどん広がってしまうこともありますので、こんな症状がないか、わんちゃんの皮膚の観察もこまめにしてみてくださいね。

この記事を書いた人

獣医師 伊村晶子
皮膚科認定の資格取得に向けて勉強中。子供たちに命の大切さを伝える活動もしています。ポックル動物病院も私自身も、動物と飼い主様のお力になれるようずっと成長し続けていきたいと思います。

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