今日はわんちゃんのワクチンのお話です。
わんちゃんの飼い主さんには必ず知っておいて欲しい、きちんと考えて判断して欲しい、大切なお話です。
ワクチンは、わんちゃんを命にかかわる伝染病から守ってあげるためのもので、これまでは一年に一度の接種が必要、とされてきました。
しかし、2007年にWSAVA(世界小動物獣医師会)が科学的根拠に基づいたワクチネーションガイドラインを初めて発表しました。このガイドラインは動物への「ワクチン負荷」を軽減する目的で作られており、少しずつ更新されてきています。
http://www.wsava.org/WSAVA/media/PDF_old/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf
これによるとコアワクチンは0歳で2~3回、6か月または1歳で1回、その後は4歳、7歳と3年に1回の接種が推奨されています。
(コアワクチンというのパルボウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルスのことです)
実験的エビデンスでは3年に一度でよい、と承認をとったワクチンも海外では出てきています。
しかし実験での値がワクチン効果として反映されるとは限らないこと、そして日本の規制当局では1年のままで変更されていないことから、獣医さんの中でも議論されているというのが現状です。
それでは3年に一度で本当に大丈夫なのでしょうか?
実際に当院で抗体価検査を実施してみると、3年持続せずワクチンの効果が下がっている子もおり、海外でのガイドラインを完全に鵜呑みにするのは危険ではないか、と考えています。
ワクチンの回数を減らせれば副作用(アナフィラキシーショック)のリスクを減らせます。
ただ、何も気にせず3年に1度の接種にすることで、感染症にかかってしまう子を出したくない、という想いもあります。
必要な時にだけワクチンを接種してあげたいのですが、
わんちゃんを見るだけでは、実際ワクチン効果が残っているのかは分かりません。
そこで、その子にとって本当にワクチンが必要かどうか判断できるよう、ワクチン抗体価を院内で測れるキットを導入しました!
今日は写真で手順をご紹介。
まずわんちゃんから少しだけ(検査に必要なのは血清5μl)採血させてもらいます。
それをピペットで滴下し、専用液に決められた順に、決められた時間、浸けていくだけ。
飼い主さんには結果を記入した抗体価検査実施証明書をお渡ししています。
これにより、抗体価が十分であればその年はワクチンを打たないという選択ができます。
ただし、これで判定できるのはパルボ、ジステンパー、アデノの3種類のコアワクチンだけ。
7種以上のワクチンに含まれる、レプトスピラ症予防には毎年の接種が必要となります。
トリミングショップやペットホテル、ドッグランなどで1年以内のワクチン証明書を義務づけている場所に行く子は、抗体価検査用紙でも可能かどうかは飼い主さんから施設に問い合わせてしていただくことになります。(当院のトリミング、ホテルは利用可能です)
また約5%のわんちゃんはワクチン接種をしても抗体ができないタイプ(ワクチン無反応群)であるというデータがあります。ワクチン無反応群であるならば、ワクチンをどれだけ打っても効果はでないため、ワクチン接種は行わない方針となります。
ちょっと難しいお話でしたが、今後はワクチンの来院時にもお話させていただくことになります。
うちの子はどういう方針にするか、ご家族でも検討してみてくださいね!
この記事を書いた人
- 皮膚科認定の資格取得に向けて勉強中。子供たちに命の大切さを伝える活動もしています。ポックル動物病院も私自身も、動物と飼い主様のお力になれるようずっと成長し続けていきたいと思います。
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