ウサギの、歯が原因で起こる膿瘍

少し朝晩で冷え込む事が多くなってきました。
この時期は人間だけでなく、温度変化に敏感な動物たちも体調を崩しやすい時期です。
こまめに食欲をチェックしたり、ケージ内の温度をチェックしたりと、充分に気をつけるようにしてくださいね。

今回はウサギの膿瘍について。

ウサギさんの膿瘍(「うみ」の事です)は、不正咬合が原因で発生する事が多く、顔の周りに発生します。
人間とは違い、ウサギさんの膿瘍はプロセスチーズの様に硬く変化する事から、外科的な治療が必要になることがほとんどです。
大きな膿瘍ができた、と来院されたミルクちゃんも、不正咬合が原因でした。
上の写真でみると本当に大きな膿瘍である事が分かります。IMG_3784

膿瘍を治療する場合には、排膿させる事、膿を洗浄する事、原因を除去する事、抗生剤を使用する事、この4点が必要となります。
今回は下顎骨の一部から膿が発生していましたので、十分に皮膚を切開しひたすら殺菌水で洗浄します。
当院では、上の治療に加え、必要に応じて抗生剤を添加したビーズを設置する方法(AI-PMMAビーズ法)と、半導体レーザーによる消毒を併用するようにしています。
ミルクちゃんは原因となっていた部位にビーズを設置し、洗浄を行うため皮膚は縫合せずオープンな状態で手術を終了しました。
真ん中にみえる白い物は、一番の原因となっている部位に挿入してあるガーゼです。IMG_3786

歯が原因となって発生する膿瘍はなかなか完治せず、再発することが大変多い疾患です。
ですが上記のビーズ法を併用するようになってから、かなり状態が悪い膿瘍でも再発なくしっかりと直せるケースが明らかに増えています。

さてミルクちゃん、手術後は自宅でひたすら殺菌水での消毒を続けてもらい、2週間後にはこの通り綺麗に治ってくれました。このIMG_0065ビーズ法、万能ではありませんが何度も再発している膿瘍に対しては切り札になる可能性がある治療だと考えています。

ただ、もともと不正咬合にならないようにするのがベストなのは間違いありません。
とにかくしっかりと牧草を食べてもらうようにして、ペレットだけに依存させないようにフードの管理をしていってもらいたいと思います。

この記事を書いた人

院長 伊村啓
院長 伊村啓
動物病院は、飼い主様と一緒に、大切な家族である動物たちの幸せを考え、不安や苦しみを解消する場です。検査もただ行えば良いという訳ではありませんので、必要な理由をきちんとご説明した上で進めていきます。筋道を立て、とにかく分かりやすく説明する事には特に力を入れています。

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