モルモットの頸部リンパ節炎

先日、大阪での学会に参加し、夜ご飯で食べた美味しいたこ焼きに大満足だった獣医師榮藤です。

前回まで、モルモットの三大疾患をご紹介してきました。今回は番外編?として、ここ最近で診させていただくことの多かった疾患のひとつをご紹介します。

それは「頸部リンパ節炎」です。

モルモットでは、体表の様々な部位に膿瘍が発生することがあります。特に外傷などから感染し皮下膿瘍を形成することが多く、また歯科疾患に関連して顔面に発生することもあります。
その中でも今回お話する頸部リンパ節炎では、頸部のリンパ節に膿瘍が形成されることがあります。

モルモットの頸部リンパ節はこのように存在しています。

「エキゾチック臨床 モルモットの診察」より

頸部のリンパ節炎は、主には口腔粘膜に出来た傷から細菌が侵入することで起こります。そのリスク因子としては硬い餌の給餌、不正咬合などがあげられます。

モルモットの膿瘍は硬くチーズのような質感をしていることが多いです。治療としては外科手術で膿瘍を袋ごと完全切除する方法や、膿瘍を切開して排膿し、繰り返し洗浄、抗生剤の投与をする方法があります。

(以下、手術画像があります。苦手な方はご注意ください。)
今回ご紹介するきなこちゃんも、お迎え後に頸部の皮下が腫れていることに気付かれました。
診察時、針を刺して中身を一部吸引、顕微鏡で見てみると…細菌と、炎症細胞が多量にみられ、頸部リンパ節炎(膿瘍)と診断しました。

その後膿瘍サイズは拡大傾向にあり、全身麻酔下で切開排膿を行うことになりました。
手術当日、膿瘍のサイズは30×26×20mmと、小さい体に対しては大きく感じるほど拡大していました。

切開するとクリーム色の膿瘍が出てきました。全て掻き出し、洗浄しました。

皮膚を切開すると膿が出てきました。
きなこちゃんは鼠径部にも膿瘍があり、そちらも中身を吸引しました。

その日、傷口は開放した状態にし、抗生剤の軟膏を注入しました。
掻き出した膿は細菌の培養検査と、抗生剤の感受性試験に提出しました。結果、連鎖球菌の仲間の細菌が検出され、その抗生剤感受性試験に基づいた内服薬を処方ししばらく服用してもらいました。

また、この疾患は再発にも注意しなければいけません。特に切開排膿では膿瘍の袋構造は体に残っている状態です。きなこちゃんは術後から現在まで再発の所見はありませんが、飼い主様にご協力いただき、定期的な通院とおうちでの触れ合いの中で確認をしています。

リンパ節は他にも、腋窩(脇)、鼠径部(股)などにも存在します。

ご自宅で触れ合う中で「あれ?こんなのあったかな?」と気になるものがあれば早めにご相談くださいね。

この記事を書いた人

獣医師 榮藤
ハムスターを飼っていたことから、エキゾチックアニマルの診療を行う獣医師になりたいと考えるようになりました。大学在学中にはすっかりモルモットの虜となり、現在は2匹のモルモットとともに暮らしています。
動物たちと飼い主様に寄り添う獣医師になれるよう、日々精進してまいります。

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