痒みと戦い~犬疥癬の治療記録~

今日は少しめずらしい、しかし人にもうつるのでわんちゃんの飼い主さんには知っておいて欲しい、寄生虫の病気を紹介します。
去年夏に来院してくれたアルトちゃん(来院時10歳)Mix犬のご紹介です。
他院で痒み止め、抗生剤、シャンプー治療を5ヵ月しましたが改善に乏しく、激しい痒みがあるということでの来院でした。
最初は昨年冬に手足から痒みが始まり、おなか、耳、脇、かかとと全身に広がっていったそうです。
来院時の写真がこちら↓

お話を聞いていくと、アルトちゃんのお家はわんちゃん1匹だけで同居の動物もなく、わんちゃんとの接触もないとのこと。飼い主さんご家族の皮膚にも痒みの症状があるということでした。おでかけはお散歩とトリミング、散歩中の動物との接触もないとのこと。
まず各種感染症がないかどうか、皮膚の検査はスタンプ(ガラスをペタっとつけて染色する検査)、掻把(皮膚表面をカリカリ擦り落として顕微鏡でみる検査)、セロテープ(セロテープをペタっとつけて顕微鏡でみる検査)、ウッド灯(照らして真菌がいないかみる検査)等をしていきます。
その結果、耳の掻把から出てきたのがこちら↓

疥癬(イヌセンコウヒゼンダニ)という寄生虫とその卵です。ダニがいれば必ず検出されるわけではないのですが、見つかれば確定診断となります。そして治療ですが、ここまで全身に増えてしまうと治療はそう簡単にはいきません。

月1回の駆虫薬を2回、飼い主さんにも環境の消毒やシャンプーをしてもらったおかげで、2カ月後にはカサブタはほとんどなくなり、検査でもダニが出なくなりましたが、まだ痒みは続きます・・・犬の疥癬症には角化型疥癬(耳や肘に厚いカサブタができる感染症)と通常疥癬(ダニに対するアレルギー反応)の2種類があるのですが、アルトちゃんの場合は角化型疥癬から通常疥癬に移行していったのかなと思われます。
今でも外耳炎と身体の痒みが時々あり、アレルギー性皮膚炎のお薬を少しづつ減らしながら使ってもらっていますが、見た目はすっかり元通り、カサブタだった所にも毛がはえてきました。

アルトちゃんの場合、感染経路は明らかではありませんでしたが、通常は感染しているわんちゃんや野生動物との接触から感染します。おでかけする子や多数のわんちゃんを飼ってる子は気を付けてくださいね。

この記事を書いた人

獣医師 伊村晶子
皮膚科認定の資格取得に向けて勉強中。子供たちに命の大切さを伝える活動もしています。ポックル動物病院も私自身も、動物と飼い主様のお力になれるようずっと成長し続けていきたいと思います。

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