膀胱炎予防のためクランベリーサプリに重課金している獣医師の蒲原です。わんちゃん猫ちゃんが服用するウロアクトプラスにもクランベリーエキスが入っていますよね。親近感を感じます。
今回は爬虫類の食欲不振についてです。
よくある症状ですがその原因には様々なものがあり、診断はとても難しいです。特に爬虫類を飼育されている皆様には、原因を大まかに知っておいてもらえたらと思います。
大きな分類として爬虫類の食欲不振は
・原発性 (Primary)
・二次性 (Secondary)
・偽食欲廃絶 (Pseudoanorexia)
の三分類に分かれます。
今回はまず原発性に関してお話しします。
原発性とは、主に摂食中枢(脳)が関与する食欲不振です。
そして原発性と分類された中でさらに病理学的、生理学的、心因性に分かれます。細かいですね。
病理学的な原発性食欲不振とは、摂食中枢(脳)に病的な異常がある状態です。
例として、ウイルス性脳炎、ボアやパイソンに起こる封入体病、など重度神経学的異常が挙げられます。疑わしい場合は他の個体と隔離し、抗生剤等を使用しながら治療していきますが、神経症状が現れた爬虫類は残念ながら予後不良であることも多いです。
また、爬虫類の神経学的な身体検査に関しては他の動物よりも難しく、我々としてもまだまだ勉強中です。ウイルスに罹患しているかは生前の確定診断が困難で、亡くなった後の病理解剖検査で診断されます。
生理学的な原発性食欲不振は、原発性の中でも例が多いとされます。
例としては妊娠、ヘビの脱皮前、などが挙げられます。これらは通常は治療の必要がありません。
妊娠においては、妊娠初期には食べていても後期になると体腔内が卵で充満し、食餌が入るスペースがないため食べられなくなる、という機序で認められます。正常所見のため卵が産まれるまでまずは様子を見ることがありますが、場合により治療を開始します。爬虫類の種類によっては産卵を促す注射を使用し、反応がない場合は外科手術まで検討する例もあるため、飼い主様と獣医師が一体となり慎重に経過を追う必要があります。体重が減少しているかどうかも重要な情報です。
他には飼育環境として十分な日光を浴びていない場合や、至適温度での管理ができていない場合も生理学的な原発性食欲不振に含まれます。
心因性の原発性食欲不振は、名前の通り精神的なものが含まれます。
例として、同居の爬虫類にいじめられていたり、活き餌に身体を噛まれた経験から食べられなくなった、などがあります。また、かわいさゆえにトカゲやカメレオンを色々な場所へ一緒に連れて行き、常に触れ合っているような個体も慢性的なストレスから拒食することがあります。爬虫類は特に極端な接触がそのまま体調の不調に繋がってしまいます。
前述した至適温度の不備などもこの心因性の原因につながります。なるべくストレスを与えないよう、野生下ではどう生きているかを常に考えて環境を整える必要があります。
原発性の話だけで長くなってしまいました。どんな原因があるかわかっているだけでも、暮らしの中で改善できる点はないかなど気付けることがあると思います。
次回の蒲原ブログでは二次性食欲不振から紹介します。
この記事を書いた人
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大学の時に行ったエキゾチックアニマルのイベントがきっかけでヘビが大好きになりました。実際にヘビを飼育することで、犬や猫に加え爬虫類や他エキゾチックアニマルの診療を幅広くしたいという想いがより強くなっていきました。
獣医師としてまだ駆け出しですが、精一杯勉強して多くの患者さんの助けになれるよう頑張ります。
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