猫ちゃんの痒み

先日、遅いお正月休みを頂きました。
年末年始も昨年同様に病院はドタバタでしたので、久々にゆっくりと時間を過ごすことができました。

今年一番、私の投稿は、猫ちゃんの皮膚炎について。
皮膚、特に顔周りや下腹部、四肢などをひたすら舐めてかゆそうです。
という事で来院される猫ちゃんは多くいます。

アイキャッチ画像のタラちゃんもその一人。
かかとにできた皮膚の潰瘍が1年以上治らないとのこと。ずっとエリザベスカラーを指示されており、飼い主さんも大変困っていらっしゃいました。潰瘍は1センチ以上、非常に治りづらい位置です。

まず、皮膚の部分の感染を抑える事から始めました。
カラーは猫のストレスになるためどうしても必要な時以外は外します。
適切な包帯を継続する事で徐々に組織が回復。
数ヶ月がかりで潰瘍は治癒しました(写真)。
tara dermatitis
しかし、皮膚が治った後も暇さえあればかかとや背中を痒がります(痒みに対しての治療はまだしていませんので当然ですね)。皮膚検査では明らかな異常がありませんので、心因性の皮膚炎と考えられました。
そこで、精神安定剤(人では抗うつ薬)とかゆみ止め(低用量のステロイド)を併用し、かゆみを抑え再発を予防することができるようになりました。

りんちゃんも治らない皮膚炎を抱えていた一人。
首の皮膚炎の治療をしていたがなかなか治らない、という事で来院されました。rin dermatitis
皮膚を見てみると、ごらんの通りかなり広範囲に皮膚炎が広がっています。
検査では、皮膚で一般的にみられる細菌がみられるだけでした。

そのため、たらちゃんと同様、初期は消毒と抗生剤で感染のコントロールをし、続いて精神安定剤を使用しました。
リンちゃんは非常にお薬に良く反応してくれ、1ヶ月足らずでかなり回復。rin dermatitis 2
この後は投薬を中止してもかゆみは再発せず、今ではすっかり良くなっています。
このように、猫ちゃんの痒み、皮膚炎がなかなか治らない場合、結構な割合でストレスが関与しているケースも多くあります(外傷性皮膚炎)。
この場合、ストレスを取り除きつつ、精神安定剤を使っていく事で快方に向かいます。
ストレスとは、治療のためのエリザベスカラー、引っ越し・同居猫などの環境、飼い主さんが遊んでくれない・飼い主さんに叱られる、などなど多岐にわたります。
もちろん感染性の疾患が原因であることも多いので、慎重にひとつずつ原因を除外していく必要があります。
場合によっては、一つ一つ条件を変えながら試験的な治療をする事も必要です。

皮膚の治療は、私たちと飼い主さんが協力して行わないと決して成功しません。
治療の大きなヒントになる事もありますので、何かあれば、その都度私たちスタッフに教えて下さいね。

それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人

院長 伊村啓
院長 伊村啓
動物病院は、飼い主様と一緒に、大切な家族である動物たちの幸せを考え、不安や苦しみを解消する場です。検査もただ行えば良いという訳ではありませんので、必要な理由をきちんとご説明した上で進めていきます。筋道を立て、とにかく分かりやすく説明する事には特に力を入れています。

関連記事

  1. 動物の投薬難しいですよね…

  2. 犬の腹部超音波検査

    家族総出の機器選び

  3. お気に入りの〇〇〇がない!? そんな時はご注意を・・・

  4. 犬猫の心肺蘇生、もしもの時にできる事

  5. 動物の味覚について

  6. 爪切りだけでも動物病院へ!

最近の記事

PAGE TOP